女二人

   私は最近、二重人物像的な作品をよく試みる。繰り返したり対立させたりなど、一人の女性を二人の姿に組み合わせるのである。
   「女二人」は赤いコスチュームの女性に、影のような黒いコスチュームの女性を背中合わせに立たせた。姉妹、友達同士どのように見てもかまわない。しかし、私は二重人物によって一人の女性を人間的空間的に完結させたいのである。
   私が若者たちをかきたくなったのは数年前である。別に理由があったわけではないが、現代の若者たちを群れとしてとらえた方がより今日的であると思い、個々の人物より群像や二重人物像を多くかいた。群れの究極は二人である。
   古代では二重人物を愛の象徴とする考えもあった。また考えようによってはキュービックなとらえ方といえるかも知れない。

朝日新聞1979年7月29日(日)「紙上創作展」